「1974年2月」から「2009年2月」へ


「ベケ」についての記事を読んだ後、昨晩の講演後、プレザンス・アフリケーヌで購入した「アンティーヤ」誌の記事を幾つか拾い読みをする。

「アンティーヤ」はグアドループ、マルティニックで発行されている社会派の地元の週刊誌。価格は、現地では2.20ユーロ、フランスでは2.60ユーロ。パリでひとまず入手したのは、2月に発行されたものを二冊。3月のものを一冊、5月のも のを一冊である。2月の二冊の特集は、もちろんグアドループとマルティニック のストライキだ。ゼネストの主要記事を書いているのはトニー・デルシャム(Tony Delsham)。カリブ文化にかかわる小説や評論を発表している、作家兼ジャーナリスト。3年前マルティニックをはじめて訪れた際に、たまたまシェルシェール図書館で出逢って、その後楽しい旅をしたHくんとの会話の記憶によれば、デルシャム氏はアンティーヤ誌の編集長だったように思う。そのデルシャム氏の記事を読んではじめて、3年前にル・マランで歌を聴き、その後OさんにCDをお借りした、コロ・バルスト(Kolo Barst)の代表曲「fevrier 1974」の歌詞に頻出する、「1974年2月を忘れるな」の意味が理解できた。記事のタイトルには「1974年シャルヴェから2009年2月へ」とある。シャルヴェ(Chalvet)はおそらくマルティニックの農村(残念ながら手元にまだ地図がなく確認できない)。1974年2月、このシャルヴェで、やはり今回のような生活のためのストライキが起こり、(おそらくストライキの目的地であろう)カシユス・ド・ランヴァル(Cassius de Linval)邸の目の前で、デモ隊は警官隊に襲われる。デモの先導者であったイルマニー(Ilmany)ほか数名が狙われ、イルマニーはその場で射殺。これをきっかけに警官隊と全面衝突し、何人かが発砲により負傷。当時19歳のマリー=ルイーズ(Marie-Louise)もこの衝突のなかで弾にあたり死亡。1974年2月とは、二人の死者を出した、いわば「弾圧と抵抗の記憶」 であったのだ。
さて、「2009年2月」は、デルシャム氏の記事によれば、この「1974年2月」の記憶を引き継ぐ、フォール=ド=フランスの市街地で行なわれた全面的なストライキであるといえるようだ。なお、前回紹介した「ベケ」の記事だが、デルシャム氏によると、これを書いたロジェ・ド・ジャアム氏は「Tous Creoles」という団体の代表で、「ベケ」の代弁者のような人物であるとのことだ。その後、ベケ特集の三月号を開き、ジャアム氏が白人企業経営者、つまりベケであることが判明した。アフリカ人も奴隷売買を行なったという趣旨の相対主義的発言が、いったいどういう立場から発せられているものなのか、気になっていたのだが、その疑念は払拭された。

コメント

norah-m さんのコメント…
ド・ジャアム氏のコメントについてですが、やはり相当偏向しているように思えました。
ベケの市場独占にかんしてテュラムの挙げた数字は、フランソワーズ・ヴェルジェスが挙げていたものや、例のカナルプリュスのドキュメンタリー冒頭で挙げられているものともだいたい一致しています。
ベケの経営は13%だけというけれど、それは見方の問題で、たとえば最大のベケ企業Groupe Bernard Hayotのウェブサイトなど見ると、彼らの企業活動が自前の店(たとえば地元スーパー)の運営だけでなく、本国や他国の大企業(日産とかルノーとかカルフール)の業務委託という形で相当に幅をきかせていることが見えてきます。
http://www.gbh.fr/groupe-bernard-hayot/historique.asp
それが今回のストライキのすべての要因かというと、それだけとはいえないとも思いますが。
匿名 さんのコメント…
とても興味深く読みました。お忙しいでしょうが、色々書いてくださると楽しいです。勉強の合間に、よろしくお願いします!
omeros さんの投稿…
norah-mさん、コメントありがとうございます。たしかにおっしゃるとおり、ジャアム氏のコメントは偏向しています。最初に新聞の記事を読んだときには、どういう人が書いているのか分からなかったため、ひとまず発言内容をピックアップした次第でした。その後、いろいろと情報を入手したのでした。
たとえば、これはプレゼン技術にも関わることですが、数字をあげると一見客観的に見えますが、統計は相当綿密にやらないと、客観性を得られませんからね。だから、今回の場合も、恣意的に操作された数字になっていると考えられるわけです。ただ、ともかく、今回のストライキをめぐって、どのような立場でどういう発言があるのかを見るのは、興味深いと思えます。
omeros さんの投稿…
匿名さん、コメントありがとうございます。今は比較的時間にゆとりがありますので、なるべく機会をみつけてご報告したいと思います。
あと、そうそう、norah-mさん、ベケ企業についての情報をありがとうございます。勉強になります。そういえば、シュザンヌ・セゼールについての本が最近出版されていました。まだ手に入れていませんが、アマゾンで買えます。
norah-m さんのコメント…
シュザンヌ・セゼール本の情報、どうもありがとう!
たぶん雑誌『トロピック』の記事をまとめたものですね。解説に期待します。