ティエリー・アレ


アビタシオン・クレマンでグアドループ出身の新世代の画家ティエリー・アレ(Thierry Alet)の展覧会が始まった。今日はその初日。取材ついでに訪問予定の親友に連れて行ってもらった。アビタシオン・クレマンの経営者はマルティニック有数のベケであるそうだ。クレマン・ラム(Rhum Clement)という自社ブランドを持っている。展覧会のスペースは、アビタシオンの一角にある。レセプションの今日は、招待客でいっぱいだった。今回の展覧会は、これまでの画風とはまったく異なるものであるという。タイトルは「カタルシス」。入り口には、女の子のような奇妙な人型の絵が飾ってあり、その隣に、夢のなかに出てくる女の子の話が書かれている。なかに入ると、会場の壁一面に、落書きのような、性的なイメージに溢れた、残酷なデッサンが描かれている。おおくが上下さかさまに描かれている。面白いといえば面白いのだが、どうも素直に賞賛できない。バスキアほどの迫力もないし、多くのデッサンに共通するあからさまな性と残酷の結びつきは、バタイユの名を想起させるにせよ、凡俗な気がしてしまう。作為的なアウトサイダー・アート? 「カタルシス」と題されたこの展覧会を形容するには、まだぼくのうちでは言葉が実らないようだ。無料で配布されたカタログにはマリーズ・コンデが序文を寄せている。一瞥するかぎりでは、カリブ文化のうちでこの芸術家を捉えようとしているようだが、やや無理があるのではないかと少しだけ訝しがってしまうのである。

コメント