ラマンタン、ジャズの夕べ、世界の響き

ラマンタン・ジャズ・プロジェクトはフォール・ド・フランスの隣町ラマンタンでこの数日にわたって開催されている小さなジャズ・フェスティヴァル。今日土曜日は関係者を招待したコンサートが行われた。日本では、マルティニック音楽といえば、マラヴォワ、カッサーヴ、カリが比較的知られているが、マルティニックのジャズミュージシャンについては、よほどの音楽通でないかぎり知らないのではないかと思う。以前、マリオ・カノンジュ(Mario Canonge)のアルバム「リゾーム」(Rhizome)を聞いたことがあった。音楽評論家東琢磨さんに教えてもらった覚えがある(「図書新聞」に紹介記事あり)。「リゾーム」にはエドゥアール・グリッサンがライナー・ノーツを書いていたこともあって、親近感を覚えるアルバムだった。そのカノンジュがこのフェスティヴァルに来ていた。今年日本に来日する予定があり、日本のコンピレーションアルバムに参加するとのこと。小柄で柔和な人だった。カリブジャズのなかでは、サックス奏者のリュテール・フランソワ(Luther Francois、「リュテール」はフランス語読み)が比較的よく知られているようである。マルティニックの隣島セント・ルーシャの音楽家だ。明日、ぼくの最近のお気に入りのピアノ奏者エリック・イルドフォンスが演奏する。その演奏にリュテール・フランソワも参加する予定だ。さて、今日の演奏は、ピアニストと太鼓の二人組。名前を失念してしまったが、演奏はすばらしかった。アフロ・カリビアンの音楽を基調にしており、マルティニックの町音楽シュヴァル・ド・ボワをベースにした楽曲がとくによかった。以前来たときにも思ったが、島には、世界的知名度はなくとも、良質な音楽家たちがたくさんいる。小さな島の、小さな場所で奏でられる音楽ではある。でも、その音楽は、聞く人の耳と身体をとおして、別の場所と時間で奏でられていた無数の記憶の音楽と響きあいながら、一時の「世界の響き」を生み出すのかもしれない。今日のピアノ奏者が、太鼓はぼくたちの根、リゾームだといっていた。それはカリブ音楽に欠かせないものであると同時に、無数に張り巡らされる根茎のように、あらゆる場所へ響いてゆくのではないだろうか。マルティニックのジャズもまた、他の音楽と同じように、世界の拡がりのなかで捉えられるとき、ローカルなジャス(つまり音楽市場の片隅に取り残されたちっぽけなジャス)という狭小な認識にはおさまらない、そのすばらしい意義をぼくたちは見出せるのかもしれない。

コメント

norah-m さんのコメント…
マルチニックは本当に隠れた音楽の宝庫ですね。
ピアニストが自分にとっての太鼓の重要性について語っているところは感動的。前も感じたことがあるけれど、アンティーユ(アメリカ)の演奏者がピアノをリズム楽器として扱いながら音楽を作りだしていく様子はとても魅力的に思えます。
omeros さんの投稿…
ええ、まったくそのとおりですね。文学のみならず、絵画、音楽、ひとしく芸術の分野におけるカリブ的拡がりと交流が存在するのだとおもいます。グアドループの音楽も面白いに違いありません。機会があればレポートしたいとおもいます!