帰郷ノートの宇宙的解釈

6月は、いや6月もといった方が正確かもしれないが、エメ・セゼールを記念する催しが多い。マルティニックの南西部アンズ・ダルレではこの一月の間、セゼール関連の催しが行われている。最終日は26日で、カリブ文学愛好者ならば知っているかもしれない、社会学者アンドレ・リュクレス(Andre Lucrece、マルティニック社会や文化にかんする評論を書いている)が、「アンティーユ的アイデンティティへのエメ・セゼール作品の影響」という題目の講演を行う。興味はあるが、時間と場所の問題でぼくは行けないだろう。フォール=ド=フランスの文化施設アトリウムでも、今週はセゼールの記念週間。昨日は、何の予備知識もなく、「ゼトワル」Zetwal(クレオール語。フランス語のles etoiles、星の意)という60分ほどのドキュメンタリー的映画を観た。結論をいえば、近年見た映画のなかでは出色の出来だと思う。滑稽で、しかも感動的な作品。この映画をいつか見る人のために、個人的な感想や批評を記す代わりに、この映画の紹介文を訳出しよう。ジュリア・ステワールという人の記事から。「ロベール・サン=ローズ(Robert Saint-Rose)。この名を聞いて何か思い当たる? ジル・ゼリ=ディ=コザック(Gilles Elie-dit-Cosaque)の新作ドキュメンタリー「ゼトワル」の冒頭は、この問いに人々が答えるところから始まる。しかし、フォール=ド=フランスの街頭でも、地方の村でも、ロベール・サン=ローズの名に思い当たる人はもはや誰もいない。おかしくもありまた人の気も引く始まり方だ。ロベール・サン=ローズは、宇宙へ行こうとした最初のマルティニック人。1974年、ヴォルガ浜辺の近くにロケットを作り始めたロベールに、地方ジャーナリズムは興味深々である。ゼトワルは彼の物語をたどり直すものである。ジル・ゼリ=ディ=コザックは夢の果てまで行こうと決めたこの人物にやさしくも愉快なまなざしを向ける。ゼトワルとは、どんな反対もものともせず、目的を追い求めることへの励ましである。またこれはエメ・セゼールと、力強い、人を熱狂させる彼の詩にたいするオマージュでもある。(……)」(以上、引用)この紹介文に少しだけつけくわえると、ロベール・サン=ローズがロケットを作り始めるきっかけになるのが、セゼールの「帰郷ノート」である。セゼールの詩の独自の解釈が、宇宙に行くという着想を彼に与えるのである。出発する、それは星へと行くことなのだ。

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