アンティーユのフェフェ

以前用事で隣町ラマンタンに行ったとき、ショッピングセンター内のレザルド川書店で、「フェフェ」(Féfé des Antilles)という絵本を手に取った。1979年が初版の絵本なので、若干絵に古さを感じなくもないが、見方を変えれば、今日まで幅広く読まれてきた絵本だということだ。いまのマルティニックの若者たちも子供の頃にこの絵本を読んだのかもしれないと思うとなんだか楽しくなり、持って帰ることにした。さて、その「フェフェ」を先日読んだ。お話は、島の漁村で生まれたフェフェという男の子(9歳)を主人公に、マルティニックやグアドループ島の田舎(とくに漁村)の生活をたどるというものである。カリブ海の漁村で営まれてきた生活の雰囲気が絵とともに伝わってくるので、カリブ文化に関心がもつ大人が読んでもそれなりに楽しめる。たとえば、フェフェの住む、木の板とトタンでできた小屋は、二つの部屋からなっており、一つは食事の場所、もう一つは寝る場所である。扉は夜をのぞいて基本的に開け放たれている。その家で、フェフェは「アノリ」と呼ばれる大きなトカゲを飼っているのだが、アノリは害虫を食べてくれる存在として言及されている。フェフェの行動をとおして、島の伝統的生活を紹介しようとするため、フェフェにいろいろなことをさせて若干設定に無理があるのだが、少年をとおしていろいろなことが一度に知れるのはありがたい。マンゴー、パパイヤ、ゴヤーヴ、パンの木の実といった身近にある果物、海の天候が悪くなるときにだけ見かけるという黒い海鳥マルフィニ(漁師が海に出るかどうかを判断する材料)、洗濯やプランテーションの様子、サイクロン、食生活、海で採れる熱帯の魚、町の様子、祭りの様子などなど。また面白いのは、会話部分は基本的にクレオール語であるという点である(ただし括弧にフランス語訳が挿入されている)。生活のことばがそうなのだから、無理がない設定でいいなと基本的には思えるのだが、その反面、絵本ではクレオール語がパトワとして紹介されている。また、この頃の本にはありがちなことだと思えるのだが、フランスは「憧れの国」である。象徴的なのはフランスに出発するバナナ輸送船が「母なる祖国」号であること。また最後の祭りの場面では、フランス国旗がいくつも描かれている。そのような背景を考えると、最初に思っていたのと違う推測が出てくる。この絵本はひょっとしたら、マルティニックやグアドループから移民として本土にやってきた家族の子供(つまり故郷を知らない子供)をとくに想定して書かれているのではないか。というのも、たとえフォール=ド=フランス近郊に暮らしている家族にしても、この絵本で登場する生活は直接的ないし間接的に子供の頃に経験するのではないかと考えられるからだ。そのように考えると、カリブ海の田舎の生活を紹介するというこの絵本の目的がより鮮明になる気がするのである。

*なお「フェフェ」は日本のアマゾンでも購入可能。

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