クロワジエールの夜

フォール=ド=フランスの沿岸に「クロワジエール」という名前のレストランがある。クロワジエールはフランス語で船での遊覧のこと。町の夜はいつも早いが、このレストランはいつも深夜近くまで営業している。「クロワジエール」は、観光客だけでなく地元客もよく利用する。料理の値段はこの界隈ではおそらくリーズナブルであり、バーとしても利用できるので、人の出入りはわりと多い方だ。「クロワジエール」の魅力はなんといってもジャズの生演奏が楽しめること。最近では、セント・ルーシャのサックス奏者ルテール・フランソワ、ラテン・ジャズのパコ・シャーリー、ポール・ロジーヌの親戚ですぐれたピアノ奏者ジル・ロジーヌが演奏した。(なおここは「ブルー・ノート」ではないのでチャージは一切かからない)。そんな場所柄であるので地元のジャズメンもよく集う。先日、「クロワジエール」でクロード・セゼールが演奏するから来てみないかと友人ロドルフが誘ってくれた。クロード・セゼール? もちろん初めて聞く名前だ。「クロワジエール」の夜はやや遅い。演奏が始まるのはだいたい21時30分を回ってからだ。クロード・セゼールはピアニスト。トリオでの演奏だった。ドラムはジョゼ・ゼビナ、ベースはフィリップ・ビュルディ。この二人はカリとマラヴォワのグループとして日本に二度来たことがあった。クロードのピアノは柔らかくしなやかで、ジョゼの厚みのあるドラム、フィリップの重いベースとしっかりバランスをとっていた。マルティニックの伝統音楽を再解釈・再創造したユジェーヌ・モナやマラヴォワの曲を演奏するところに、彼らのマルティニックのジャズ奏者としてのアイデンティティを感じる。クロード・セゼールのトリオはCDを出している。『マルティニックの少年』のテーマ曲の演奏が秀逸だ。

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