ホテル・マルティニック

この週末シェルシェールの四つ星高級ホテルを見学する機会に恵まれた。観光客が多く集まる南部のトロワ・ジレやポワント・デュ・ブーのような観光ホテル密集区域とは違い、シェルシェールには観光ホテルは少ない。海岸に面した洒落た立派なホテルであるが、宿泊客らしき人はほとんどいない。土曜日の昼下がりなのに、ホテル内のレストランには客はおらず従業員は暇そうにしている。金融恐慌のあおりで客がいないのではないかと友人。たしかにそのようだ。ただ理由はどうもそれだけないらしい。今週号の「アンティーヤ」ではホテル産業の危機についての小特集が組まれていた。島に客が来ないのである。2009年にかぎっていえば、金融恐慌のほかに、2月から3月にかけて起こったゼネストが主要な原因であるとホテル経営者側は考えている。しかし、このほかにも海外県特有の構造があるようだ。インタビューを受けたあるホテルグループの社長によれば、島は1月から3月がハイ・シーズン。グループの売り上げの65パーセントがこのシーズンに集中するという。客は基本的にフランス人。6割が地方から、4割がパリからくるという。この社長の分析によると、客足の落ち込みは本土の交通事情と関係している。マルティニックとグアドループに行くためにはオルリー空港を使わなければならないが、現在は地方空港とオルリーを結ぶ航空便が減少し、TGVの交通網が発達しているため、地方客はパリに出た後、そのままシャルル・ド・ゴール空港を使ってカリブ海以外の観光地に出かけるとうわけである。そのような特殊な構造のなかでホテル経営は逼迫し、閉鎖するところや、オフシーズンには閉めるホテルも出てくる。そうすると、地元の従業員も一方的に解雇されたり一時的に休職を余儀なくされたりする。厄介な問題である。マルティニックやグアドループが「本土」のための観光地であり続けるのは難しいだろう。かといって、カリブ海唯一のユーロ圏であるマルティニック・グアドループは隣の島の住民たちからみればやはり高級な島だ。とても旅行どころではないだろう。そう考えると、ホテルの経営危機も海外県の構造とどうやら無関係ではないらしいことがわかってくる。発想を転換して、観光をやめてしまえばよいというラディカルな考えもあるだろう。だがさしたる産業もない島の経済を考えれば、そうすることは容易ではないはずだ。難しい問題である。

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