Nemo, Matinik Debout, Editions d'Alternative libertaire, 2009

2009年2月から3月かけてのマルティニックのゼネストの参加者による記録。題名は『マルティニックは立ち上がる』。四章から構成されている。第一章では奴隷制時代から近過去にいたる「抵抗」の「反乱」の歴史が扱われ、第二章ではストの概要およびその意義と結果がまとめられている。第三章ではストの経過報告がなされ、第四章では今回の社会運動を反資本主義運動へとつなげるグローバルな展望が示される。本書の著者は反資本主義を標榜するAlternative libertaireの成員であるという。本書は、著者の思想信条に共感する人にとってとりわけ価値があるように思われるが、一般にマルティニックの政治や時事問題に関心のある人にも面白いのではないか、と思われる。というのも、本書にはマルティニックの労働組合、政治組織および今回の社会運動の文脈で重要な役割を果たした人物について、親切にも解説をつけてくれているからである。たとえば報道を通じてゼネストに大きく貢献した人物として言及される地元のテレビ局の一つKMTのジャーナリストのロラン・ラウシェ(Roland Laouchez)の名前などを知る機会は島民以外にはほとんどないだろう。また他局の報道姿勢、要職につく政治家たちの発言、その複雑な関係などについても本書を通じて垣間見ることができ、興味深い。本書の面白さはストの経過を日録調に報告する第三章にある。その日の主だった出来事が知ることができて面白いが、その間の日々の生活についての詳述がないことが残念だ。たとえば2月11日の記述で「農業の人が消費者に直接作物を販売したところ、クリストフィーヌはなんとキロ50サンチームだった。スーパーではキロ2ユーロするのに! トマトもイニャムもメロンも同じだ! これでどれだけ中間業者が搾取しているのかが分かる」というような趣旨のことを書いている。では、こうした販売は一月以上におよぶゼネストのなかでどのくらいの頻度で行われていたのだろうか。その日はどのくらいの人がクリストフィーヌを買えたのだろうか……。些細なことかもしれないが、ゼネストという消耗戦を支えていた人々の生活のあり方を個人的にはもっと知りたいところだ。去る9月11日には、今回のゼネストを主導したマルティニックの組合連合「2月5日集団」がもう一度ストライキを呼びかけるとの噂が流れたものの、結局、「集団」は11日に集会はするがストライキを呼びかけるわけではないと事前に声明を発表した。それでも11日には600名ほどの支持者が集まったと伝えられている。

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