LKP、K5F、二つのデモ

2009年10月3日(土)は、グアドループの「過剰搾取反対連合」通称LKPがデモを正式に呼びかけた日だった。LKPのリーダー、エリ・ドモタは、44日間の長期ゼネストの上でなされた三月の合意(通称ビノ協定)が、経営者側にも、国家にも遵守されていないことにたいし、この間、度重なる怒りを表明し、抗議活動と経営者側との交渉を行ってきた。そして今回、1月20日の動員以来、約8ヶ月後にグアドループ島民にたいしデモを呼びかけたのである。ただし、今回はストライキが目的ではなく、現段階における合意の不履行と国家の不実をグアドループ島民に知らしめることを目的としている。動員日を平日ではなく土曜日に定めたのは、この呼びかけがストライキではないことを示すとともに、国家にたいする「警告」の意があったと思われる。しかし、同時にこの呼びかけはLKP側にもそれなりの覚悟が伴われたはずだ。というのも、グアドループ島民がこの呼びかけに応じなければ、LKPの求心力を弱めることになりかねないからである。5000人集まれば、運動は一応の成功といえるようだが、この日の朝、ポワンタピートルの街頭には、警察側の推定で6000人、LKP側の推定で25000人(地元紙「フランス=アンティーユ・グアドループ」の推定では約8000人)におよぶ人々が集まった。

同日、マルティニックでも、LKPと連携したデモが行われた。マルティニックのゼネストはグアドループのそれを受けるかたちで2月5日から38日間にわたって行われたので、ストを主導した組合連合は決起日にちなみ「2月5日コレクティフ」(K5F)と呼ばれている。しかし、「2月5日コレクティフ」の呼びかけに応じたマルティニック島民の数は、数百名であったと地元紙は伝えている。

マルティニックでは、K5Fの結集力は急速に弱まっている。「物価高への生活」の現状は、マルティニックもグアドループも変わらない。相変わらず生活費は高い。にもかかわらず両島における動員数には、圧倒的な開きがある。この開きを分析することはぼくの手にあまるが、あえていま思うことを書き記せば、K5Fの弱まる存在感と現在の政治的議論とのあいだには何らかの相関関係があるように思える。

マルティニックでは、現在、島の政治的ステイタスをめぐり、政治が過熱している。今後、フランス憲法第73条に定める海外県(DOM)のままでとどまるか、それとも、74条に定める海外自治領(COM)へと移行するか、という議論がしばらく続いている。この議論の背景には46年の海外県化以来の複雑な歴史があり、政治家はもちろんのこと、島の作家・知識人から組合労働者まで、多くの人が議論を戦わせている。たとえば、マルティニックの独立派MIMの党首にして地方圏議会の議長アルフレッド・マリ=ジャンヌは今回のストライキにたいしては否定的であり、島の経済低迷を理由にストライキの停止を呼びかける一方で、このストライキの問題を政治的ステイタスの問題へと「翻訳」してみせた。今回のストライキを政治における「自治」要求の動きとして「翻訳」した政治家は、マリ=ジャンヌだけではなかったはずである。PPMの党首にしてフォール=ド=フランス市長セルジュ・レッチミーもまた「新しい社会組織」の必要性をこのストのさなかに述べていた。その後、6月の県と地方の統一議会では「自治」要求への合意がとられている。このように、地元の政治家たちがスト要求を政治的要求として捉える一方、この間、政府の対海外県政策としては、「三部会」(民間人も参加できる有識者会議のようなもの)設立、大統領の「自治」容認発言、グアドループ人マリ=リュス・パンシャールの海外県・自治領担当大臣への抜擢などがあった。

すなわち、マルティニックではゼネストの要求が政治的要求へと「昇華」しているのではないか。それがK5Fの力を急速に殺いでいるのではないかと思われる。ただし、これは現時点での素人の感想。もっと注意深く観察する必要がある。


追記 先回お伝えしたように、K5Fの呼びかけの下9月11日の集会にはmaison des syndicatsに600名近い支持者が集まった。そのことを考えればK5Fもまたその力を失っていないように見えるが……。

コメント