カルベ賞授賞式

この数回のブログで2009年度のカリブ海カルベ賞の催しを紹介してきたが、12日(土)に行われた肝心な授賞式についてはまだ報告をしていなかった。12日の19時から地域圏議会でカルベ賞の授賞式が行われ、参加した。地域圏議会の建物はクリュニーという場所にあるらしく、近くまでバスで行こうと思い、18時頃にフォール=ド=フランスのバス停広場に到着し、クリュニー方面に向かう103番のバスに乗ろうとしたが、土曜ということもあって時刻が不規則で次は1時間後であった。仕方なくタクシーに乗って地域圏議会へ。

夜の地域圏議会の建物はまるでホテルのように豪華にライトアップされていた。18時半には到着した。招待状をもって中に入ると、開始まで時間があったので自由に席が選べた。正装をしている人が多かったため、麦藁帽子に白シャツという姿ではちょっと格好がつかないと思い、後部席に座る。予定時間の19時を回っても始まる気配はなく、30分過ぎになって授賞式が始まった。出席者は立ち見も出ていたため300名以上はいたように思う。

最初にグリッサンの最近のインタビューからなる15分ほどのドキュメンタリーが流れ、その後、地域圏議会議長アルフレド・マリ=ジャンヌの挨拶(マリ=ジャンヌ氏はマルティニック独立運動の党首であり生粋のナショナリストである。ちなみにマリ=ジャンヌのしゃがれ声は不十分なフランス語聴解力しか身につけていないぼくにはかなり聞き取りにくい。)、エドゥアール・グリッサンの挨拶と続いた。そして、カリブ海カルベ賞の審査委員の紹介が続き、いよいよ発表という段になった。グアドループの作家エルネスト・ペパンが審査発表を務めた。

ちなみにカルベ賞は、小説部門、評論・辞書部門、詩部門、演劇部門の4部門が構成されている。審査委員の一人マイケル・ダッシュの「フランス・アンティーユ」のインタビュー記事によれば、近年の傾向として出版点数は多くなっているものの、詩集は少なく、小説が多いとのことであった。これは世界的な傾向だろう。

エルネスト・ペパンの講評後、最後に口する名前に聴衆は集中した。一瞬気を許していたぼくは名前を聞き取ることができなかったが、カルベ賞受賞者の名前を聞き、すかさず、二、三名の人が立ち上がり、拍手をした。そして、一気に取材カメラが前列に座っている人に殺到する。立ち上がったのは、なんとエドゥイ・プレネルさんではないか。昨日、高校でグリッサンたちの話を聞いた風変わりの東洋人にやさしい笑みを浮かべながら話しかけてくれ、とても感じのよい人だったからお名前を教えてもらえますか、と尋ねると、「エドウィ・プレネル、ジャーナリストです、本も書いていて、翻訳は唯一日本語と韓国語だけ出ているのですよ」と言っていたその人であり、夜の市庁舎の議論の際に司会を務めていた人である。(その後、ぼくは彼が「ムッシュー・ル・モンド」であったことを知った。無知とはおそろしい。)

しかし、すぐに受賞者はエドウィ・プレネルさんではなく、父親のアラン・プレネルという人であるのを知った。マルティニックの教育に貢献した功労者であり、マルティニックに赴任時は若者たちのために戦ったということを讃えての授与だった。エドウィさんは父親の授与の言葉を代読しながら今回の受賞に感謝の意を表した。

正直、今回のノミネート作品がすっかり無視されていることには驚きを隠せなかったものの、その後のジャズミュージシャンにして言語学者のジャック・クルシルの感動的な演奏を聞き、グリッサンへの挨拶も果たせ、最後にはカルベ賞の司会を務めた作家マニュエル・ノルヴァさんに偶然車に乗せてもらって無事に帰宅することができ、充実した一日だった。

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