ジャック・シュヴァルツ=バルトの音楽(1)


マルティニック滞在後、マルティニックやグアドループの音楽が大好きになった。レコード屋に入ると、まっさきにチェックするのがカリブ海音楽のコーナーである。日本では、カリブ海音楽のコーナーが存在することが珍しいが(もちろんレゲエは別格)、フランスではきちんと存在する。さすが「ワールド・ミュージック」の国だ。

カリブ海音楽をチェックするとき、欠かしてはならないのがジャズ・コーナーである。なぜならジャズは、カリブ海音楽を構成する重要素であるからだ。そして多くの場合、カリブ海のジャズ・ミュージシャンは、出身地域によって分類されず(ようするにワールド・ミュージック・コーナーには置いておらず)、ジャズという上位区分に分類されている。さて、この場合、ジャズ・コーナーからマルティニックやグアドループのミュージシャンを探すのは容易ではない。ミュージシャンの名前を最初から知っていることが前提になる。それでも、あたかもジャズ・コーナーの海のなかに点在する小さな島を発見するかのような作業だ。だから、「J」のコーナーにAlain Jean-Marie(アラン・ジャン=マリ)の名前を発見したりするときは、とにかく嬉しい(アラン・ジャン=マリは、グアドループ出身で、若い頃からビギンのグループに加わってピアノを弾いていた人。いずれ紹介したい)。

今回、CDコーナーで見つけたのは、Jacques Schwartz-Bart(ジャック・シュヴァルツ=バルト)の新作「Rise Above」だ。両親にシモーヌ&アンドレ・シュヴァルツ=バルトという有名な作家をもつ、グアドループ出身のサックス奏者。新作は、比較的目立つところにおいてある。最初見たとき、「ジャック・シュヴァルツ=バルトも偉くなったナー」などと勝手に思ったものだ。都会的な、洗練されたジャケット、そして配給会社はフランスのドレフュスだ。しかも、タイトルは英語。世界進出を狙っているのだろうか。なんだかぼくにはいけすかない。

メジャーなもの、メジャーを目指すもの、そうしたものにあまり関心を持てないのは、どうやら生来の傾向であるようだ。カリブ海で演奏されるジャズなど、ジャズ界の比類なき巨人たちの残した仕事を愛好する人々からすれば、聞くに値しないかもしれない(そういう考え方があることは知っている)。たしかに小さなジャズ・ミュージシャンの仕事は、偉大なミュージシャンの模倣から始まっただろう。しかし、小さなミュージシャンがたゆまず行う営みは、やがて独自のものになってゆく。マルティニックやグアドループのジャズの場合、それはカリブ海の土地の音楽との融合という形をとることが多い。

ジャック・シュヴァルツ=バルトの音楽には、いつも太鼓が鳴り響いている。グアドループの農村部のグオカと呼ばれる音楽をベースにしたジャズだからだ。グオカ=ジャス。これは、ジャック・シュヴァルツ=バルトというミュージシャンが歩んできた独自の道だと思う。分析的に考えれば、そこにぼくが愛聴する理由があるのだろう。

コメント

ban さんの投稿…
日本でも手に入るかな?
聴いてみたくなりました。
omeros さんの投稿…
アマゾンでJacques Schwarz-bartと検索したところ、二枚のアルバムは日本で入手できます。こちらで紹介した最新アルバムはまだですが、いずれ購入できるようになると思います。ぜひお聴きください!