ジョビー・ベルナベ

グリッサンのオデオン座公演は見逃したが、今月5日のジョビー・ベルナベのコンサートには行ってきた。場所はジャズ好きには有名な「ニューモーニング」だ。チケットの事前購入の仕方がわからなかったので、直接行くことにした。19時30分開演となっていたので、余裕をもって19時過ぎに会場に行った。しかし、待っても待っても開場しない。ようやく20時前に開場する。しかも、ずっと並んでいたのに、チケットの事前購入者が優先されるシステムで、外で40分近く待った意味がまったくなかった。骨折り損をした後、ようやくチケットを購入し、席に座り、待つこと30分以上。開始時間19時30分とはなんだったのか。結局、コンサートが始まったのは20時30分過ぎのことだ。おなかもすいたし、まちくたびれたし、連日の疲れでうとうとしはじめたときに、ついにジョビー・ベルナベが登場した。

さて、ジョビー・ベルナベ。マルティニックのミュージシャンだ。フランスでは無名だが、マルティニックでは有名人。シャモワゾーとコンフィアンの『クレオールとは何か』にクレオール詩人として名前が出てくる(記憶違いでなければ、『クレオール礼賛』にも)。そう、この人は、「歌手」でも「奏者」でもない。クレオール語、フランス語で書いた自分の詩を朗読する人、いまなら「スラマー」と呼ばれる人だ。ジョビーはよく通る低い声の持ち主だ。ジョビーがうたえば、大地が震え、笑えば、空が震える。とても人の声だとは思えない。すごいのだ。

そして見た目。仁王のようだ。足は大木のように大地に根を下ろしている。かっと見開いたときの目の大きさ。一度見たら忘れられない。

そう、ぼくはマルティニックでジョビーを二回観た。一度はテレビで。もう一度はフォール=ド=フランスの墓地の横のバス停で。ジョビーは大きな目を見開いてジープのような大きな車を運転していた。また、フォール=ド=フランスの病院でワクチンを打ったときのこと。医者にぼくはクレオール語学者ジャン・ベルナベのもとにいると言ったら、医者はこんなことを言った。「いいかい、クレオール語といったら、ジャンもいるけど、ジョビーだよ。ジョビーはすごいクレオール語の語り部だ。」

でも、マルティニックでは直接会う機会はなかった。CDも探したが、見つからなかった。

ジョビーは、最近、30年の音楽を集大成した2枚組のアルバムを出した。今回のコンサートはそれにちなんだものだった。小さな会場にはマルティニック出身、あるいはグアドループ出身の人たちがほとんどだったのではないかとおもう。なかにはマルティニックの大物政治家クロード・リーズもいた。(クロード・リーズには一度だけ挨拶をしたことがあったけど、今回は遠慮した。)なんだか、なつかしい雰囲気にも思えた。帰りぎわに声をかけられる。「ジョビー・ベルナベのコンサートをどうして知ったの?」思いがけない質問。「マルティニックに住んでたからだよ、一年。そのとき、マルティニックの音楽を発見したんだ。」

家に着いたのは12時頃。ずいぶん冷え込んでいたはずだが、帰りは寒さを感じなかった。

コメント

ban さんの投稿…
聴いて、見たい人ですね。

日本はあっという間に冬です。
omeros さんのコメント…
日本ももう冬ですか。こちらも少し前から冬らしくなってきました。パリでは曇りの日々が続いています。