行動の人

ゆとり……。これぞ肝要なことである。およそ人間の予測で、計算によって得られるような予測は知的なものであり正当なものである。しかし自然は信じられないほどの恐ろしい不意打ちを人間に取っておいていることを、われわれは常に自分にいいきかせなければならない。誰でも行動の人間は、「たしかにこんなことが起こるだろう、だからあらかじめこれに備えよう」と考えた後に、自分に向かって次のようにいうべきであろう。「そしてこれは全く起こりそうにもないことだが、これについても準備をしておきたい」と。そうしておいて初めて行動の人は難関を切り抜けるチャンス――道理にかなったチャンスを持てるであろう。常におもいがけないことが起こるものなのである。

確率論だけでは充分でない。人間のいのちが賭けられているときには、起こりそうもないことまで考慮に入れておかねばならない。

            アンドレ・モロワ『初めに行動があった』(大塚幸男訳、岩波新書)

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