ファミリステール、19世紀のユートピア

パリの北東にギーズという小さな町がある。この月曜日、この町にあるファミリステールと呼ばれる19世紀に建設された小さな集住地区を見学しに行った。ギーズまでは約150キロ離れている。車を出してくれる友人のもとに11時に集合した。道に迷ったりして現地に到着したのは15時過ぎ。18時頃までいて、パリに戻ってきたのは21時頃だったから、車で片道3時間はかかるということになる。

ファミリステールは、ジャン=バティスト・アンドレ・ゴダン(1817-1888)が試みた社会主義的ユートピアだ。ストーブや加熱調理台を鋳造する工場労働者たちの住む町である。「社会宮殿」と呼ばれる集合住宅(写真上)、学校、劇場、食堂、プールなどから成る。シャルル・フーリエの社会主義思想に大きな影響を受け(ファミリステールはファランステールのもじり)、労働者とその家族が人間的に生活を営める理想的環境を作ろうと試みたようだ。

車を運転してくれた年上の友人は、なんでも祖父の家にゴダン社製の加熱調理台があったり、懐かしい家庭用品が展示してあったり、親だったかが鉱山で働いていて似たような設計の集合住宅に住んでいた、とかいったことで、子供時代を思い出して、とても喜んでいた。この調理台はこうやって使うんだよ、という風に説明してくれたので、展示品のモノたちが当時の家庭にある姿を想像できたりしてこちらも楽しかった。

ファミリステールは今からみるとかえって閉鎖的な空間のようにおもえるし、ある見方からすればこうした試みの先に社会主義の悲劇が待っているのかもしれないけれど、都市化・工業化によって人びとの生活が劇的な変容を遂げようとしていた19世紀半ばにあって、新しい集団的労働形態にあわせた社会モデルを模索することは、よりよい人間的生活にむけた未来を目指すことだったのだろう。

ちなみに、ここの食堂でとても遅いお昼をとった。飲み物はとても安い。食事がもう少しボリュームがあっておいしいと申し分ないのに。

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