K先生との散策


この数日間、パリの13区の中華街、10区のバルベス地区やブリュッセルに訪れることがあった。13区の中華街はよく買い物に出かけるけれど、大学都市という、南のはずれに住んでいると、パリの北側(セーヌ河右岸)は何か目的がなければ出かけることがなく、バルベス地区となると、普段はまったく行かない場所である。

せっかくパリに住んでいても、自分の生活圏から出ないわけだから、もったいない。探究心が欠けているのだ。そもそも、ぼくが勉強しているのは、フランス語系カリブ海文学。マルティニックからパリに渡った2010年4月頃は、それこそ、カリブ海の海外県民に「第三の島」と呼ばれるパリで、アンティーユ系の人びとといろいろな出会いをしたい、などと思っていたのに、こうして1年以上経過した今、振りかえってみると、カリブ海系のイヴェントに参加したり、関連する本を収集したりするばかりで、人びとの実際の生活にあまり関心を払ってこなかった。反省。

そういう基本的なことに改めて気づかせてくれたのは、K先生との散策だった。K先生は、フランス語界で華やかな仕事をしておられ、見た目もスマートでカッコよく、自称「都会派」というのもついつい納得してしまうのだが、じつはそれ以上に「庶民派」であり、人びとが生きる場所としての「都会」に興味を持っていると思うのだ。だから、街を歩いていて、見ているものが、ちょっと違う。

普通は、どこかに行くとき、何か目的をもってゆくことが多いと思う。それは、歴史的建造物だったり、美術館だったり、観光名所だったり、レストランだったりする。そういうことにも関心を向けつつも、K先生のまなざしは、雑踏を歩く人に向かっている。ブリュッセルの目抜き通りで行き交う人びとを観察している。話をしていると、この街がパリと同じくらい多様で雑種的な空間であることに、気づくのだ。

そんなわけで、今回、人びとが行き交う、パリのなかでも生活感溢れる、中華街やバルベス地区を歩いた。もちろん小さな目的はあるけれど、基本的には地区を歩くことが目的だ。
中華街もバルベスも、K先生との散策はこれで二度目なのだが(運良く去年も同行できた)、訪れるたびに、新たな発見がある。週におそらく一度は行っている中華街は、ぼくにはただの買い物空間に過ぎなかったけれども、そこに暮らす人びとの生活に思いを馳せれば、見方が大きく変わってくる。

そういう姿勢を、見習いたい。

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