レオン・ゴントラン・ダマス『ブラックラベル』

ネグリチュード三人衆のひとりとして知られるレオン・ゴントラン・ダマスの長編詩『ブラックラベル』がガリマール社の詩文庫に入った。ダマスの作品は、プレザンス・アフリケーヌ社から代表作『色素』および『神経痛』の合本版が廉価版で出版されているが、セゼールとサンゴールと違って、全詩集は未刊行のままだ。そのため、ダマスの詩にかんしては、いくつもの詩集が図書館でないと読めない状態が続いてきた。『ブラックラベル』はガリマール社から刊行されていたため、ブランシュ版がひとまず版を切らさず残っていたが、今回の詩文庫の特記すべきところは、『ブラックラベル』だけでなく、『グラフィティ』やギー・レヴィ・マノ社からかつて大版で発売されたPoèmes nègres sur des airs africainsの全文が収められていることだ。

すでにジャン=ミシェル・プラス社から民族誌Retour de Guyaneの再刊も出ていることだし、ダマスの著作の大部分は入手できる環境がそろった。これは快挙である。今回の文庫版もプレザンス・アフリケーヌ版の校訂を務めたダマス研究者サンドリヌ・プジョルの校訂による。……こうした書誌情報に詳しくなったのは、パリでおこなってきた研究によるところが大きい。研究といっても独創性とはほど遠い、カリブ海フランス語文学の資料収集と読解という地味なもの。その過程でダマス作品をすべて集めた。もう少し早くこの詩集が出版されていれば、こちらの苦労も軽減されてたのだが……。今年はダマス生誕100年、来年はセゼール生誕100年だ。ネグリチュード文学の再評価が進みそうな予感がする。

日本ではネグリチュード詩としては、セゼールの『帰郷ノート』が平凡社ライブラリーで読めるだけだ(それだけでも画期的であるとも言えるけれど)。サンゴールにかんしては、このセネガル大統領の初来日にあわせて詩集が非売品というかたちで出版されている(訳者は恒川邦夫氏)。図書館に入っているのかは知らないが、古本市場では入手可能である。その関連でいえば、飯塚書店の『世界黒人詩集』(1975年)は古本で比較的低価格で入手できるのでお薦め。この本はフランス語圏の詩を多く扱っている。ポール・ニジェールやギイ・ティロリアンの詩を日本語で収録している。ダマスの詩も数編含まれている。また「ブラックラベル」にかんしては松井裕史氏による全訳が本人のブログに掲載されている(こちら)。

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