帰還の謎


遅ればせながら読んだ一冊。ダニー・ラフェリエールの来日にあわせて昨年刊行された。この本はフランス語圏文学の近年の本としてはメディシス賞を受賞したこともあって話題の一冊だった。ラフェリエールはフランスでも海外フランス語作家として比較的人気があると思う。読みたいなと思っているうちに翻訳が刊行されたので、日本に戻ったさいに手にとることに。

印象的だったのは、モントリオールからハイチへ30数年の空白を経て「帰還」した「ぼく」が見て、感じるハイチだ。とくに「飢え」という言葉が心に刻み込まれた。ハイチの「貧困」についてはよく語れることだし、それは頭では理解していても、この作品の文学体験をとおして得られる「貧困」は、また違う。おなか一杯食べられることなどないから、絶えず空腹を覚えながらの日常。その空腹は物理的にも精神的にも渇望を生み出すものだ。おそらくハイチにとどまった作家はこの渇望を語ることができるのだが、ラフェリエールはこの点についてはあまり語らない。「内」にして「外」にいる、あるいは境界上にいるラフェリエールのハイチとの距離が感じられる。

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