試訳 その2

パトリック・シャモワゾーの第二作目の小説『ソリボ・マニフィック』(1988)より。


アン! ソリボ・マニフィックはくるりと回り切ったところで到着した。濃い口髭、あごの先には箒か吸いさしのような尖った髭をもち、黄色くも赤くも見えるその眼はタフィア酒飲みの達人の証だった。白いナイロン地のワイシャツには、なんと金のカフスと、銀のスプリングアームバンドを身につけていた。必死になって逃げてきたテルガル地のズボンは、エナメルのサンティアゴ靴の上にぴったりと垂れていた。要するに、ソリボはまだ自分のもう片方の名前[マニフィックは「素晴らしい」の意]に見合っていたわけだ!……彼は聴衆に挨拶をするために帽子を持ち上げた。皆の衆、「今晩は」と言うのは、昼間じゃないからで、「お休みなさい」と言わないのは今晩の夜は不吉な土曜日の板豚[カリブ海の板のように痩せた豚]のようにやがて白くなるからで、その白さといったら一本のキビの真ん中で散歩用の日傘を差す陽射しを浴びたことのないベケさえもかなわないほど白いのさ、エェ、クリィ?……
 「エェ、クラァ!」と連れ添いは答えた。
  すると、遠くのざわめきが静まった頃に、〈言葉の達人〉は、薬の効かない熱を聴衆に感染させながら話をした。大事なのは言っていることを理解することでなく、言っていることへ自らを開くことであり、そこへ運ばれるのに身を任せることなのだ。なぜならソリボは演奏家[アレクサンドル・]ステリオが息をぐっと吹き込むクラリネットのソロよりも曲芸的に喉で音を出すからだ。ソリボの声は夜通しとどろいた。言葉の達人に自分たちが眠りこけてないことを示すのに、聴き手は力いっぱい「エェ、クラァ!」と答えた。「ミスティクラァ!」はラテン系オーケストラの楽隊の通過のように響いた。空が白くなり靄のかかった風が夜明けを告げる頃、ソリボ・マニフィックは言葉が詰まったようにしゃっくりをした。それから、皆さん、どうしてなのかもどのようになのかも分からないが、「パタトサ!」と彼は叫んだ……。(「パタトサ!」はクリッククラックのなかにはない。語り部は「エェ、クリィ」と言って「ミスティクラァ!」を求めたり、「聴衆が眠っているのか」を知るために「スゥプレ?」と問いかけたり、タフィア酒や太鼓のリズムを求めたりするが、けっして「パタトサ!」と叫ぶことはないのさ……。)

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