試訳 その3

[…]彼は理解しないでいた。自分はこの土地を開墾し、未開人どもと対立し、あのニグロ連中の面倒を見て、野蛮人どもにプランテーションと砂糖精製の知恵という美を授けるためにどれだけ闘ってきたか。自分の人生は、勇気と苦しみ、仕事と疲労、高ぶる精神と安寧を知らない心の連続、ただそれだけだ。しかしながら、こうした極度の疲労にもかかわらず、〈主人〉はちっともよく眠れなかった。彼は、示し続けてきた勇気や、力強い建設者としてのヒロイズムには馴染まない不穏な羞恥が心中にあることに気づいていた。彼はこの感情を書物が啓示する原罪のせいにしようとしたことがあったが、ミサがこの感情を和らげることは一向になかった。告白も無駄だった。羞恥の感情は、言い難いもの、口にし難いもの、彼の知る由もない見え難いものや告白し難いものに巻きついたままだった。彼は自分に誇りを抱いていたがこの誇りは、ある時間になると、大道芸人の衣装のように崩れてしまうのだった。これらの木々と数々の場所の真ん中に彼は一人きりでいたのであり、彼がずっとしがみついてきたヒロイズムにはもはや大した重みはなかった。彼の書き残したものによると、彼は征服者の巨大帆船の数々を操縦した。猛り狂うカリブ族に対して砲撃を見舞った。命を落とした友人兄弟をランビ貝の下に埋めた。オウムを仕留め、マナティー[ラマンタン]の油を燻し、砂浜を走るツグミの卵を丸のみした。かの地を焦がれて流謫の身を嘆き、使い古した思い出となくした手紙に涙した。タバコとインディゴ、それからサトウキビを植えた。ニグロを護送するために船を改造した。ニグロを売った。ニグロを買った。ニグロには彼の人種の最上の人間を与えた。石造りのどこよりも高い壁を建て、大理石の根城と偉大な者が眠るゴチックの穹窿を築いた。それから錨泊地の鏡のなかに白い街を建設した。それから混血女の髪の上にいくつもの港を作った。煙を吹く土地を開墾し、火山が吐き出したいくつも川を制し、泉の小天使の夢想を妨げる蛇を追い払った。大きな小屋を薄明と粘土でこしらえ、水車を築き、精糖所を建てた。役に立つ道を通し、十字路の印をつけた。アルコールの秘密と(たなびくレースをつけたつばの広い帽子を被り、真っ白な腕をした、透き通るように白い女性のそばで)生きることの甘美さを追求した。マングローヴ林と傾斜面では、もっとも肥沃な畑から施しを得た。一度も泣かず、自分の行為を聖なるものと正統化する神を決して疑いはしなかった……。デモヤハリ孤独ダ!……年を経るごとに強まるこの沈黙。自分の勝利の影にあるこの孤独という毒。自分の歩みを解体してしまうこの運命。逃亡行為を滅するために彼がこの〈大森林〉について語ったことが、いまや彼にも宿っていた。〈かつて〉を知り、過ぎ去った無垢の聖体)を隠し、始原の力をなおも震わせるこの〈大森林〉はいま彼の心を揺さぶっていたのだ。逃亡ニグロはすでに〈大森林〉に魅了されていた。逃亡ニグロはママの腹のなかのようにこの森に身を匿っていた。彼らは畑の溝に落ちるよりもここで死ぬのことを望んでいた。逃亡者は、人が大聖堂を凝視するように、木々を見つめていた。彼らは木々に慇懃なる尊敬の念を示していた。すると木々は彼らに話しかけるのだった。〈主人〉の方は、木々を悪意で飾り立てていた。ゾンビの巣窟、悪魔の巣窟、熱の巣窟、神隠しの巣窟!……。こうした嘘は彼の心中に予期せぬ仕方で募っていた。〈主人〉はいまそのことを感じていた。〈大森林〉は力強かった。〈大森林〉はこちらを剥き出しにする、力づくか不幸を呼び起こして、剥き出しの堪え難い状態にするのだった。森の影に包まれながら、〈主人〉は羞恥によって自分が圧倒されているのを感じた。彼は恐ろしかった。開拓者としての振る舞うのに躊躇していた。征服者としての足取りはかすかに震えていた。引き返してはならなかった。自分の周囲に視線を投げてはならなかった。空から降ってくるいくつかの光の柱をじっと見つめてもならなかった。彼は自分の犬に執着することになる。死ぬまで犬を追跡することに。彼を生き延びさせているのはこの犬一匹だけだった。こうして〈主人〉は苦行の道を歩くのだった。


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パトリック・シャモワゾー『奴隷の老人とモロス犬』(1997)より。わけあっていまシャモワゾー関係の翻訳に取り組んでいます。(が、終わらない、このまま夏休みの方が終わってしまい、ほかのすべてを棒に振るのか……というのは独り言)。

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