今日から頭を切り替えて再びファノンを読む

ようやく翻訳作業が一段落。今日から長らく放棄していたいくつかの作業にようやく取りかかれるけれど、授業開始まであと2週間も残されていない。困った。

とりあえず、書きかけの原稿(のひとつ)のためにフランツ・ファノンを読み直す。今回読んだのは、『地に呪われたる者』の「植民地戦争と精神障害」。アルジェリア戦争における精神障害の症例を分類しつつ、いくつかの事例を具体的に紹介している章で、こちらにそれなりの体力と精神力がないと、あまりに苦しく、読み通せない。しかし、淡々と医師の目線で精神障害を記述するこの章は、ファノンの文章のなかでも、アルジェリアの「戦場」をきわめて生々しく想像させる。アルジェリア戦争時代のファノンの著述にはイデオロギー的、プロパガンダ的文章が多く、どうしてもそちらばかりが目立ってしまうが、そうした思想性は、この「戦場」を具体的な足場にしている、ということを見失ってしまっては、ファノンの文章をとても紹介することなどできない、といまは思っている。後は、ファノンの医学論文や、最近出たファノンの本などをいくつか。医学論文の方は、重要なものの要約が海老坂武『フランツ・ファノン』で確認できるが、フランスでも精神医学雑誌のかつての特集号でしか活字になっておらず、絶版状態が続いている。ぼくはその特集号で確認しているが、もう少し入手しやすいようになるといいのだが。

今日はちょっとうれしいことがひとつ。以前マルティニックの地元誌のグリッサン追悼号のために寄せた記事が、その地元誌に掲載されたのだった。島の友人から教えてもらい、パリのH君からその記事をメールで送ってもらった。記事のタイトルは「群島-世界のために、エドゥアール・グリッサンと複数の日本」だ。グリッサンの思想と日本のにからめて加藤周一の雑種文化論と島尾敏雄のヤポネシアを紹介した短い追悼文。グリッサンが亡くなった直後に書いた、3.11の前の文章だが、雑誌にはつい最近編集部に送られてきたように紹介されている。メッセージを入れて海に投げた瓶が長い時間をかけてカリブ海に届いたような、そんな気持ちだ。

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