『現代思想』2013年5月臨時増刊号「東松照明 戦後日本マンダラ」


昨年12月に亡くなった写真家、東松照明の総特集号が『現代思想』から発売されました。『現代思想』は今年創刊40周年を迎えましたが、写真をめぐる特集はあっても、ひとりの写真家についての特集ははじめてではないでしょうか。

『現代思想』の総特集号はいつも写真を表紙に使った洗練されたデザインが目を惹きます。東松照明号には、最近の沖縄での回顧展からカラー写真が収録されており、力のこもったつくりです。目次は以下のとおり(以下、青土社のページより転載)。


【エッセイ】

守宮と夜蛾 / 倉石信乃 

追放と王国 東松照明の写真から見えるもの / 鷹野隆大 

国境の街から / 菊地智子 

片思いのラブレター / タイラジュン 

吐き出された東松照明 / 島尾伸三 

東松泰子さん / 石川真生 

桜になった写真家明 / 石川直樹 

思想写真家・東松照明 / 磯崎新 
【対談・1】

写真が語り続ける 東松照明と「新しく」出会うために /  森山大道+伊藤俊治
【再録テクスト】

友よ――東松照明 / 大島渚 


【未収録インタビュー】

髪の風、…… / 東松照明/吉増剛造 


【写真アルバム】

『東松照明と沖縄 太陽へのラブレター』選 / 新里義和 選 


【時のかたち、場所のかたち】

「時」のモンタージュ 東松照明論 / 土屋誠一 

東松照明≪わたしの町≫ リアリズムと「組写真」の間で / 竹葉丈 


【群島から/へ】

水の巡礼 東松照明をめぐる海 / 今福龍太 

ドキュメントの詩学 東松照明の汀へ / 八角聡仁 


【表現のために】

雲から抵抗へ、ネクロフィリアの新しい生へ / 友常勉 

長崎の皮膚 東松照明『<11>NAGASAKI』 / 林田新 


【南へ】

叙事詩的世界から混成世界へ 転成する東松照明 / 中村隆之 

沖縄マンダラのころ / 翁長直樹 


【沖縄】

イメージの群島と光の詩学 東松照明の沖縄クロニクル43 / 仲里効

見ることに賭ける 東松照明とシマ / 田仲康弘 


【対談・2】

生きられる写真、生きるための写真 / 志賀理江子+新城郁夫 


【光をもとめて】

写真の存在する場所 / 岡崎乾二郎 

<占領>とカラー写真 東松照明と島々 / 徳田匡 


【年表・解説】

東松照明主要作品集・展覧会解説 / 友寄寛子 
年譜 

かなりの分量となるため、まだ全体に目を通せていませんが、東松照明の写真を考えるとき、重要な場所となるのが「長崎」であり「沖縄」であるため、特集にもそのふたつの場所をめぐる論考が多いように思えます。とくに「沖縄」をめぐる写真にかんしては、評価がやや別れるところであることを、いくつかの論考や発言を読みながら、改めて思いました。これは、執筆するさいにも気にかかっていたことです。

私の場合、写真に関心をもったきっかけが『長崎曼荼羅』という東松照明の新書との出会いでした。そのような個人的な経緯が重なって今回の文章には力を込めました。東松照明という写真家は「確固たる表現主体」があったと言われています。そうした写真家がこれまで求めに応じて解説してきた「物語」があります。その「物語」の呪縛は案外大きいのではないか。東松照明に寄り添えば寄り添うほど、写真家の自己語りの定型に近づいてゆくという問題をどのように引き受け、それを別様に展開するか。そうしたことを考えなら書きました。


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