山森裕毅『ジル・ドゥルーズの哲学』


人文書院の新刊は、哲学者ジル・ドゥルーズをめぐるモノグラフ。『ジル・ドゥルーズの哲学』というシンプルなタイトルに、この著名な哲学者について語られてきたこと、述べられてきたことを踏まえつつ、それを超えようとする若い哲学研究者の自負が込められているような気がする。帯には「新たなドゥルーズ研究が、ここから始まる」とあるし、その予感ははずれていないようだ。

私はいわゆる「フランス現代思想」の風景のなかで育ってきたところがあるので(たぶん世代的にそうなのだろう)、人文書の新刊でドゥルーズ、フーコー、デリダ、ナンシー、ラカン云々とあるとやはり今でも気になる。そうしたものからずいぶん遠ざかってしまったけれど、それでも最近ふと書棚から出してみて読んだデリダの『パピエ・マシン』がとても面白かったし、機会があれば読んで見たいと思っていた矢先のこの本である。

ドゥルーズ+ガタリの仕事はグリッサンにも一脈つうじるのでその観点からもドゥルーズは気になる哲学者のひとりだ。本書は、ドゥルーズの概念「超越論的経験論」を「学ぶこと(習得)」という具体的な経験にそくして解明しようとすることが冒頭で述べられており、その目的がはっきりと具体的で、哲学の大きな門の前で、入ろうか入るまいか迷うような私のような人間でも導いてくれそうな語りの優しさがある。ドゥルーズの思索を単純化したり図式化するのではなく、分かりやすく語ることを目指すこの本は、おそらく「哲学する」ということはいかなる行為なのかを、読書経験をつうじて示してくれると思う。哲学書であるから読むのには注意力と集中力を有する。しかしこの本であれば途中で投げ出さずに最後まで読み進めることができると思っている。

画像で見るとちょっと分かりにくいが、装丁は美しく、本として品がある。

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