『時制論』より


管啓次郎の詩集Agend'Arsシリーズの最新作。 地火水風という4を基本数字にしてこの4を4回かけると256。256篇4096行を目指して始まったシリーズだ。今回で4作目(しかしこれで終わりであるという)。以前と同じく全64篇からなっているが、これまでよりも、ひとつの詩編のうちの行と行との関係が暗示的になっている。寸断されているといった方が近いかもしれない。本というのは、それ自体で完結するものでなく、そこに記されている文がさまざまな本とのネットワークに入ってゆくものだとすれば、この詩集におさめられた文たちは、反響し乱反射しながら広大な詩の海となり、読み手の記憶と交錯しながら、ぼくたちのなかで編まれてゆくだろう。表紙の写真の、檻に入れられた逆さの動物(のように見える)が気になる。

今日読みながら気に入った文章(読むたびにおそらく変わるもの)。

黒砂糖を眉に塗るのは魔除けのABCだった

ときどき海が見えるたび塩の節約が議題になる

魚との交感を知らなければ川のすべては鏡だった

マイクル・ジャクソンの声を聴くたびにある悲しみがこみあげてくる
その時代には世界的に砂糖が高価で人に虫歯はなかった

混合サラダさえ作れないシステムのせいで市電が廃止される

黒い肌の子(セネガル人)がバスク語で答えることは土地の新たな栄光



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