サントノラの詩情

カンヌ滞在の第3週目(最後の週)の月曜日は快晴に恵まれた。コートダジュールは雨、曇り、快晴では全然風景が違う。雲のない空に燦々と照る太陽は海面を青々と照らす。この青がとても好きだ。

カンヌにはレランス諸島と呼ばれる群島がある。今日は午後にそのうちの一つサントノラ島に散歩にでかけた。シャネルやルイ・ヴィトンなどの高級ブティックに豪華な星付きホテルが立ち並ぶ「セレブ」の街から15分ほど船で南に進むと、小さな島々にたどり着く。群島のなかで一番大きなサントマルグリット島が歴史的な建造物(鉄仮面伝説など)が残っており人気が高いようだが、ぼくはその後ろにひっそりとあるサントノラ島に惹かれた。ここは古くから修道士たちが暮らす島であるからだ。1時間ほどで散歩できる島の大きさも適当に思えた。

島に降りて少し歩くとその風景に目を奪われた。3時頃の陽光の美しさもあるだろう。島に射し込む光が土、植物、木々、海岸、海を美しく彩った。その風景を堪能するのにすっかり時間を費やし、与えられた1時間半の散歩は結局、島の半分を回れたに過ぎなかった(船は5時の便が最終であり、ぼくはその前の便でこの島に来た)。

島の中央には修道院があり、辺りはぶどう畑で囲まれている。そう、ここではワインを生産しているのだ。帰りに修道院の店でこの島のワインを買うことにした。少々奮発したがこの島の産物であることが大切なことに思えたからだ。ワインを買うとき、売店にたまたまいた修道士から聞いた話では、日本にも毎年最低4000本をこの島から出荷しているということだった。この畑でそれだけの本数が取れることも驚きだが、日本で買えるということも驚きだった。実際、帰宅後にインターネットで調べてみるとたしかに取り扱いがある(もちろん日本の方が高い)。

このような小さな島もしっかりグローバルな資本主義経済に組み込まれている。そう思うと、ぼくが感動した風景も作り物に思えてくるような気がしないでもない。実際、楽園のように美しく造園された島は、修道士の聖地でもあり観光地でもある。とはいえ、ここで(一人の観光客が)感じた波の音、風、オリーブの匂いはたしかに地中海に浮かぶこの島にいることで、(いつかあなたにも)実感されるのだと思う。

この島にもう一度訪れるのはいつだろう。記憶が沈殿し風化してしまった頃にまた訪れみたい。

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