田沼幸子『革命キューバの民族誌』(人文書院、2014)


帯文
「もし、チェが今のキューバを見たら!……」世界の希望であったキューバ。社会主義革命の理想と現実を、「普通の人びと」はどう受けとめてきたのか。現地で暮らした人類学者が描く、等身大のキューバの姿。

***

2月下旬に刊行されたばかりの人文書の新刊のひとつ。著者の田沼幸子氏は『ポスト・ユートピアの人類学』(人文書院、2008)の編者として注目していた(この論文集自体、質の高いものだ)。『革命キューバの民族誌』は、大阪大学に提出した博士論文に基づく著書であるという。「語り」に意識的な著者の筆致は読ませるもので、キューバを一通りにしか知らない読者でも十分に理解し、味わえる構成になっている。

着眼点が興味深く、帯文にあるように、「普通の人びと」の視点から捉えられる「キューバ革命」をめぐる語りを、数年間の聞き取り調査によって物語風に再構成している。そこで明らかになるのは、公式の、権力の側からの「キューバ革命」の語りと、「普通の人びと」の語りのそれとの、一致であり、ずれである。そのずれは、もちろん、「理想」と「現実」の溝とも重なってくる。第一章と第二章では、フィデル・カストロという男性革命家が神話化され、ネーション形成が友情や恋愛によって表現されるなど、民衆的想像力のなかでネーションが受肉化される過程が示される。同じカリブ海の島でも「革命」はおろか「独立」も知らない島々のことを学んでいる者からすると、『革命キューバの民族誌』から教わることは多く、読み進めながらヒントを頂いている。

以下、目次を転載する。


序章
第一章 「新しい人間」をつくる――フィデルとチェの理想と現実
第二章 革命家たちの愛と友情――創設フィクションしてのキューバ革命
第三章 平和時の非常期間――ソ連なきあとの非常な日常
第四章 ポスト・ユートピアのアイロニー
第五章 ディアスポラとしての「新しい人間」――『キューバ・センチメンタル』とその後
第六章 アイロニカルな希望
あとがき


第5章の副題に『キューバ・センチメンタル』というのがあるが、じつはこれは著者のドキュメンタリー映画のタイトル。いずれ観てみたい。



コメント