セゼール校訂版作品集


遂に出版された、セゼールの校訂版作品集。手元に届いたのは2014年1月だが、奥付を見ると2013年11月とある。本来ならば2013年、セゼールの生誕100周年の誕生日にあわせて出版される見込みで、「ふらんす」でのセゼール生誕100周年ミニ特集でもそう書いたのだが、そのあたりはさすがフランス、予定どおりにはいかないものだ。

いずれにしても1800頁を超える大部で、セゼール作品をほぼ網羅的にあつかっている。「全集」といってよいはずだが、最終的にそう銘打たれなかったのは、おそらく未刊行や諸事情で未収録の作品があるからなのだろう。あるいはかつて「全集」として出た版があるからか(そのあたりの事情はまだ未確認だ)。

校訂版がこれまでの作品集とどう違うかといえば、一言で、ヴァリアント(異なる版)を可能なかぎり、おさめていることだ。詩人は、詩が出版されるたびに、手を加えていった。戯曲にしてもそうである。そのような各版の違いがこの作品集に収められている。

しかし、難点もある。たとえば、いくつもの版がある「帰郷ノート」は、1939年、1947年、1956年と年代順にすべて収められている。研究者でもないかぎり、「帰郷ノート」が複数収録されていても、どれを読めばよいのか困るはずだ。ようするに、研究には使えるのだが、読み物としてはいまひとつでありそうだ、というのが私の初見の感想である。

また、評論と政治家としての演説はあくまで資料の位置づけであり、それほど充実していない。研究の観点からして、収集しにくい評論や演説がより充実していると助かったのだが。とはいえ、おそらく今後こちらの集成は出るだろう。現にJean-Michel Placeからセゼールの国会議員のときの演説を集めた本が出版されている。

なお『カリブ-世界論』第2章で引用した『黒人学生』の第3号がセゼールの著作集としては初めて収められている。これはChristian Filostratという研究者の私物であり、この作品集でも、参照できた唯一の写しとして、同著者の研究書から引いている。拙著の典拠も同じである。

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