『山口昌男 人類学的思考の沃野』(東京外国語大学出版会、2014)



東京外国語大学出版会の新刊『山口昌男 人類学的思考の沃野』を紹介します。編者は、真島一郎、川村伸秀の両氏。目次については、同出版会HPをご参照下さい(こちら)。

表紙がこの本の方向性を示しています。これは若き日の山口昌男がアフリカはナイジェリアのイバダン大学に講師として赴任していたときの写真です。この本では、山口昌男のフィールドワーカーとしての側面、とりわけアフリカとの繋がりに焦点を当てた編集となっています。

山口昌男の良き読者や、当人と交流のあった方には自明のことだと思うのですが、私のような、いくつかの著作を読んだりきりで、晩年の山口氏を偶然お見かけした程度の人間には、経歴の上ではイバダン大学に赴任していたことや、『アフリカの神話的世界』(岩波新書)といった優れた著作の存在は知っておりましたが、「アフリカニスト」時代の活動の具体的なイメージが掴みきれないでいたというのが率直なところでした。今回の本は、まさに私が関心のあるところを丁寧にフォローしてくれる編集となっており、遅ればせながら、山口昌男の凄みを実感しているところです。

何が興味深いか。ぜひ読んで頂きたいのは「再録作品」の三篇です。これらはすべてアフリカでのフィールドワークにかかわるもの。カリブ・アフリカ文学に関心を抱く者としては、とくに「ネグリチュード前後」と題された1963年に発表の評論には、「再録作品」をめぐる真島氏の解題を読むにつけ、興奮を覚えました。

一見地味なところですが、佐久間寛さんによる「学術研究の記録」と題された、山口昌男が東京外国語大学・アジア・アフリカ言語文化研究所在職時におこなった共同研究の記録も、興味深い。これを手がかりに、同研究所の研究雑誌にも当たってみる必要があることを痛感している次第です。

私の関心に則しての紹介になりましたが、読み手の関心に応じて万華鏡のように変幻自在の姿を見せるのが山口学の真骨頂でしょう。山口昌男という汲み尽くしがたい知の化身の全貌解明にあたって、またしても重要作が刊行されたということです。

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