きみのスライダーがすべり落ちる その先へ



表題は、これから発売される詩集のタイトル。「きみのスライダーがすべり落ちる その先へ」。発売前なのでどうしようか迷ったけれど、すでに感想を書かれている方もいらっしゃることだし、ぼくも少々。

この詩集の著者は、清岡智比古さん。当ブログをご覧になられる方はご存知だと思うが、主にフランス語教師として活躍されている。小説も発表されている。詩については『東京詩』という東京を題材にした詩のアンソロジーと解説を書かれているし、詩に対する鑑識眼の鋭さは、個人的な会話を通じて知っていたので、今回が第一詩集となるのが、新鮮で、かつ、意外だった(もっと前に詩集を発表していておかしくない)。

くぼたのぞみさんがお書きになられているように(こちら)、ぼくも清岡さんがブログで発表されていた「小さなKに」(本書所収)が格別に好きだ。だからこの詩が美しい装丁のこの詩集に収められていることがうれしい。

この詩集が素敵なのは、その多くが具体的な情景から出発していることだと思っている。

詩というと、なんだか難しいもので、ぼくのような乏しい知性と想像力の人間にはとうていわからない世界であると思っていたけれど、それはそんな雰囲気を漂わせている詩しか知らなかったぼくの不幸だった(といっても、じつは研究ではいまでも難解な詩を書く書き手を相手にしているし、その魅力もわかりつつあるが。。。それはともかく)詩の種類には読者との距離が近いものもある。

ここに収められている詩は、読者との距離が近く、それでいて、普段、見過ごしてしまうものに気づかせてくれたり、当たり前の情景を別の視点から切り取ってくれる、という印象を抱く。人に喩えれば、そばにいて心地よく、不思議な風景を示してくれる友人(だからたまに不可解に見える)といった感じだ。

そして、詩のよいところは、一義的な解釈に収斂しないこと。いったん読んで「わかる」気にさせる文章は、詩から遠いところにある。何度でも読める。そのときの気分で読み方も変わる。詩とは人生のようなものだし、かけがえのない友人のようなものなのだ。

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