C.L.R.ジェームズ伝『革命の芸術家』(こぶし書房、2014)



カリブ海関連の新著を紹介します。

このたび出版されたのは、トリニダード出身の思想家C.L.R.ジェームズ(1909-1989)をめぐる本格的な評伝です。ジェームズは、マルクス主義系の文献で登場する、英語圏の黒人思想家として知る人ぞ知る存在。翻訳もあります。

ひとつは、風媒社から刊行された『世界革命1917~1936 コミンテルンの台頭と没落』で、「トロツキスト的立場からのコミンテルン史」(訳者あとがき)。もうひとつは、大村書店から刊行された『ブラック・ジャコバン トゥサン・ルーヴェルチュールとハイチ革命』。ジェームズの主著と評される、カリブ海文化論のなかでも大変重要な著作です。

現在、パン・アフリカニズムの運動をはじめとして、アメリカス、ヨーロッパ、アフリカを往還し、循環し、展開する黒人社会運動の網の目について、日本語で知ることのできる文献はきわめて少ないのですが、C.L.R.ジェームズというこの文脈でのキーパースンの生涯と作品を描く本書の登場によって、ついにその輪郭がおぼろげながらも見えてきた、という感触を得ています。豊富な情報量ですので、それを消化するにはまだまだ時間はかかりますが、勉強するつもりで読めば、さまざまな手がかりが得られるのではないかと思います。この文脈では、ヴィジャイ・プラシャド『褐色の世界史』(水声社、2013年)、ロビン・ケリー『フリーダム・ドリームス』(人文書院、2011)が重要な関連書になるかと思います。

著者ポール・ビュール(1944年生)は、晩年のジェームズと交流がありました。ジェームズの生前に刊行された本書(原著は1988年刊)は当人による「公認の伝記」でもあるそうです。なお、ジェームズについては、一部でその翻訳が待たれてきた、クリケット論にして代表作『境界を越えて』が月曜社から刊行される予定であるとのことで、こちらも楽しみです。

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