カルペンティエル『光の世紀』(杉浦勉訳、水声社、1990)


今更ながらアレホ・カルペンティエルの長編小説『光の世紀』を読む。いろいろな読み方ができると思うが、個人的には、この小説を、18世紀後半から19世紀前半までのヨーロッパ人およびブルジョワ階級のカリブ海社会史のように読んだ。舞台は、キューバ、サン=ドマング、グアドループ、バルバドス、ギュイヤンヌといったカリブ海域とヨーロッパ(フランス、スペイン)にまたがるが、ヴィクトル・ユーグに焦点を当てたこの小説ではとりわけグアドループとギュイヤンヌを舞台にしたパートが大変興味深い。小説によってこの時代のカリブ海史を描くという試みが、文献考証を踏まえたうえでなされており、この時代を生きた想像と現実の交点に位置する登場人物たち、とりわけヴィクトル・ユーグとソフィアのドラマに引き込まれる。

この小説から学ぶことは多い。考証に基づいて描かれる細部もそうだが、とくにこの時代の革命主義者の精神について、その理念と行為について、少し想像がつくようになってきた。人物造形の点でもヴィクトル・ユーグという、もはや資料でしか知ることのできない人物の人格を見事に造形していて、きっとこういう人間であったのだろうと思わせる。ソフィアという存在は、カルペンティエル流の女性讃歌なのだろう。

この小説の効用は、旅をしたくなること。移り住むことを恐れない冒険心と危険を顧みない恋心にみなぎった小説だ。

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