『思想』連載完結(2015年4月号)

今月発売の『思想』2015年4月号をもって「グリッサンの全-世界」と題した全5回の連載が完結した。第5回目は、「カオスの海原へ」という副題のもと、1980年代後半以降のグリッサンの足跡をたどりながら、「全-世界」というヴィジョンへの接近を試みた。これまでの連載のなかでは最長で、もう少し切り詰めてもよかったかもしれないと思わなくもないが、グリッサンを論じていると、書きたいことがとめどなく溢れてくる。

この論考を書く際に、私が意識していたのはグリッサンの『フォークナー、ミシシッピ』だ。グリッサンがフォークナーを論じたようなスタイルで、私もグリッサンを論じてみたいと思った。その書き方、語り方は、冒険的であるために、なかにはもっと論文調に書くべきだと思われる読者もいるかもしれない、そうあらかじめ予想していた。しかし、このようなスタイルで書かなければ、グリッサンの詩学を扱うことはできないと今でも思っている。もちろん最良のスタイルだとは思わないが、グリッサンの描いてきた世界とそのヴィジョンを共有するためには、マルティニック島のようにこの巨大で濃密で多様な風景のうちに、さまざまな踏み跡(trace/trail)をつける必要があったということだ。

「グリッサン・プロジェクト」はこれからだ。まずはこの論考=物語を本の形にまとめること。それから、少なくとも現時点で関わっている2つのグリッサン作品を訳し終えて刊行すること。うち1つは、例の『カリブ海序説』という大著で、3人で訳しているものだ。もう1つは小説。今年中に報告ができるよう打ち込みたい。

思想の言葉飯田 隆(2)
グラムシの教育構想
  ――知識人と大衆の超克――
黒沢惟昭(7)
獄中期におけるグラムシのクローチェ観(上)
  ――前期:ヘゲモニー概念との関係を中心に――
倉科岳志(29)
福祉国家の哲学的基礎(上)
  ――潜勢的可能性としてのケイパビリティ――
橋本 努(51)
プルーストとエマニュエル・レヴィナス土田知則(72)
ディドロ『自然の解明に関する断想』精読(5)
  ――不可知なものの承認,「後世」への自己開放――
田口卓臣(88)
グリッサンの〈全-世界〉(5)
  ――カオスの海原へ――
中村隆之(107)
〈研究動向〉ジャック・デリダ アーカイヴの未来へ
  ――没後10年をめぐる動向――
西山雄二(137)


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