清岡智比古『パリ移民映画』(白水社、2015)


清岡智比古さんの新作『パリ移民映画』が白水社から刊行されました。副題には「都市空間を読む――1970年代から現在」とあります。副題をふくめてこのタイトル、本書のエッセンスを見事に言い表しています。

そのような次第で、本書はパリの「移民映画」について都市空間への着目から論じる試みです。帯文にはこうあります。「パリとはいかなる都市であるのか? 映画のなかの〈周縁の声〉に耳を澄まし、その神話化の成立と〈郊外〉の出現、多文化的・多民族的社会の現実をあざやかに読み解く」。

清岡さんの著作には、やはり東京という都市空間に着目して詩を読む『東京詩』、「移民」に関心を向けながらパリの町を案内する『エキゾティック・パリ案内』とありましたが、本書はこの2作と繋がりながら新たに映画を素材に論じているという点でも興味深いですし、何より、日本語で読めるフランス系「移民映画」論というのは、なかなかなかったのではないでしょうか。

画像からはわかりませんが、ソフト・カバーです。清岡さんといえば、あのソフトな語り口を連想してしまうのですが、今回は、ややかためのアカデミックな文体と構成です。♡マークはありませんが、いつものように読者想いの文体であることには変わりありません。

まだ読み始めたばかりですが、「パリ移民映画」の誕生と発展を概観する第1章は、圧巻です。たとえば最初の節にみられる、パリの「神話化」が「夾雑物」を外(郊外)に排除しながら包摂することで成り立っているという指摘は、なるほど、と思わせますし、その後に続く「パリ移民映画」の年代順の概観は、ぼくには言及される映画の多くが未知のものなので、たいへん新鮮です。

本書は、映画ファンはもちろん、パリという都市、フランス現代社会・文化に関心のある人に広く開かれています。ぜひお手にとってご覧ください。

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