来たるべきフランツ・ファノン

                                        
2015年10月にフランスでフランツ・ファノンの新しい著作が刊行されました。1961年に3作の著作を残して早世したこの人物の死後刊行物としては、これで2作目となります。最初のものは、ファノンがアルジェリア民族解放戦線(通称FLN)の機関紙『エル・ムジャヒド』に発表した政治記事を中心に編まれた『アフリカ革命に向けて』でした。これは1964年に刊行されています。それから、およそ半世紀が経ったのちでの刊行物ですので、ファノンに関心を寄せる(寄せてきた)読者にとっては、大きな出来事だと言えます。

約700頁におよぶこの大著には、主に3種類の著述が収められています。1つは文学で、フランスでの学生時代に彼が書いた未刊行の戯曲です。2つめは精神医学系の論文で、これがもっとも充実しています。3つめは『アフリカ革命に向けて』未収録の政治文書です。個人的に関心をもつのは、とくに3つめの著述です。

なぜかと言いますと、ここに収録されているのは『エル・ムジャヒド』の記事だからです。解説によれば、これらの記事は無記名で、集団的な仕事として書かれてきました。つまり、ファノン一人に帰せられる記事はないというのです。これらの政治記事は、ファノンをその書き手の一人とした集団作業の成果であり、彼の代表作にして遺作『地に呪われたる者』(1961)の構想は、『エル・ムジャヒド』におけるアルジェリア革命および、それを取り巻く政治状況の分析を通じて形成されてきたということになります。このことが意味するのは、ファノンという著名のもとに出版された『地に呪われたる者』のうちに、『エル・ムジャヒド』の集団的作業を読みとることができるだろう、ということだと私は考えています。そのような読み方はファノンにとっても本望のはずです。

今年、みすず書房から『地に呪われたる者』の新装版が刊行されました。時代の要請でしょう。何度目かのファノン再読の時期に差しかかっていると予感します。


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