陣野俊史『テロルの伝説 桐山襲烈伝』(河出書房新社、2016)


ついに出た。桐山襲(「襲」と書き、「かさね」と読む)についての「文学的評伝」だ。もう2年ほど前になると思うが、著者の陣野俊史さんから、桐山襲についての本を書いているというお話をうかがった。多くの読者にはなじみのない作家だと思うが、私はこの作家を文字通り偏愛しており、博士論文を準備している頃から、彼の作品を読み継いできた。当時は講談社文芸文庫版『未葬の時』しか新刊では入手できず、作品社版『パルチザン伝説』から河出書房新社の『神殿レプリカ』まで、(『国鉄を殺すな』をのぞいて)全作品を古書店で買い集めた。そして、そのころ、よくしてもらっていた『リプレーザ』という雑誌に、桐山襲の書評を書かせてもらったりした(『リプレーザ』第1期2号、2007年)。

そのような次第で、著者から本の執筆の話を聞いたときから、出版を心待ちにしていたのだった。

『テロルの伝説 桐山襲烈伝』と題されたこの本は、400ページを超える巨篇だ。桐山の全作品について、詳しい内容紹介がなされており、また、重要な作品には、著者による「小論」も付されている。時系列的に、「桐山襲」という作家が誕生し、その生を閉じるまでを追っている。そのさい、著者は、著者の言葉で「まとめる」のではなく、桐山の引用をつうじて、作品に「語らせる」という手法をとる。これがじつに見事だ。読者は、書き写された桐山のことばを辿りながら、かれの作品世界に入っていくことができるのだ。著者は冒頭で、できれば全作品をすべて書き写したかったという趣旨のことを述べている。そして、私の読後感で言うならば、陣野さんは引用の名手である。

また、この本には、単行本未収録作品「プレセンテ」が収録されている。これは、音楽作品にたとえるなら、あまりに豪華な「ボーナストラック」だ。

『テロルの伝説』から、その伝記的部分と作品の分析の双方で、教わることがたいへん多かった。桐山について、この本について、陣野さんに尋ねてみたいことは山ほどある。近々、お会いする予定もある。楽しみだ。(書影は河出書房新社のサイトより)

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